レコードという新しさ

近松本に新しくレコード屋ができたということを聞き訪れてみた。
「新しい」「レコード」

という言葉が何だか矛盾して聞こえるが気になるので出かけてみた。

場所は蔵の通りで知られる中町通りを抜け、

昔はカタクラモールという商業施設があった方へ少し行ったところ。

地元民なら知らない人はいない

「美人度5% 元気度95%の店 オバタリアン」の近くである。

お店は古い店舗を改装したもので、シンプルなつくり。

店の方は松本市内の大学を卒業後、県内の企業に就職。

自分でお店を松本で開きたいという夢を持ち先月開業に至った。

店内にはバーカウンターもあり、レコードだけでなくお酒やコーヒーも楽しめる。
お店の奥にはDJブースもあり時々イベントも開いていくとのこと。

あまり音楽にこだわりがない自分なのでそこにあるレコードなどは全く分からなった。
レコード屋を始めたきっかけを聞くと、
たまたま好きなアーティストがレコードを出し買ったのがレコードとの出会いであったらしい。
ジャケットのかわいさなどに魅了され集め始めたとのこと。
また最近は音楽のデジタル化にともない、レコードがそれへのカウンターカルチャーとして広まっているらしい。
さらにレコードを購入するとその曲のダウンロードもできるそう。
音楽の聞き方も多種多様で、
家ではレコード、外ではダウンロードしたものと分ける人もいるようだ。
店主さんいわく、
音も非常に繊細でダウンロード版では拾いきれない音まで拾えるので音もきれいとのこと。

自分自身レコードを聞いたことはあまりないので、
視聴させてもらったがまずその原理に驚いた。
レコードの上に溝があり、針がその振動をキャッチして音が流れる。
早送りなどは正確にはできない。
今の時代不便っちゃ不便である。
しかし、なんかいい。
耳だけでなく、視覚でも音楽を聞いているという感じ。
また店主さんの言う通りジャケットもおしゃれ、まさにアート。
ディスクが大きい分いろいろな表現ができるらしい。
ジェケットで選ぶこともあるそうだが、なんかわかる。

いくつかのレコードには店主さん直筆の紹介も書かれている。
知っているアーティストでなくても、どんなアーティストなのか、
そしてどんな音楽なのか(楽しいのか悲しいのかetc,,)が分かる。

松本にはこのようなカウンターカルチャーのようなものが多く存在するような気がする。
例えば古本屋も多かったり、ショップカードなど今ではネットでどうにかなるものをあえて使っている。
モノへのこだわりが強いのだろうか。

そういえばレコードを聞きながら、
大学時代に一度お会いしたイタリア語の先生の言葉を思い出した。

「最近は音楽を噛みしめて聞くことがなくなった」

たしかにそうだ。

今はききたいとおもえばyoutubeとかでどこでも音楽は聞けるし、
いい音楽だと思えば検索することもできる。
でも昔はどうだったろう。
その音を聞く、その人の声を聞くにはその場へ行かなくてはならなかった。
レコードを買うか、週に一回のテレビで聞くことしかできなかった。
音楽の貴重さが全然違ったのだと思う。
だから聞けるときには自分の耳を全身全霊傾けて、
まさに「かみしめるように」聞いていたのではないか。
音楽を私たちの都合のいいように扱うことはできなかった。
あらゆる条件をかいくぐってやっとたどり着けるものであった。
だからかわからないが、
両親は曲の歌詞は全部覚えているし、
発売年やその時の状況などこと細かに覚えている。

最近はどうだろうか。
歌詞を全部覚えている曲は少ないし、噛みしめて聞くことなどない。
何となく聞きながしている。

松本にいるとふと立ち止まって、自分の生活を考え直す機会がある。
時には大切なことに気づかされるし、人生がより豊かになる方法を学ぶこともある。
越してきて一番の変化かもしれない。