おくやみ欄について思うこと

まさか初投稿がこんな話題になるとは思わなかった(笑)

松本に帰ってきてからというものいまだに定職についていないということもあり、
朝はゆっくり過ごすことができる。
この年になって小学生の時と同様、7時15分に父が会社に行くのを見送るのは
ちょっと恥ずかしいものだが、その時間にちゃんと起きていることがフリーターとして褒められるべきだろう。
最近は夜はすぐに眠くなるし、朝は割と早めに目が覚める。
朝はヨーグルトとコーヒー。
一応この歳だし、時間もたっぷりあるので新聞も読むようにしている。
もっぱら最近のお気に入りは「市民タイムス」。
松本市周辺の情報を扱うタウン誌である。
一面も全国紙とは異なりローカル。
「○○小学校が何周年」とか「○○祭り元気いっぱい」とか
難しい政治の話とかが書いてないので、とても読みやすい。
全国紙が新書だとすれば、こちらはエッセイ集みたいなもの。
それも地域で生きているとこの情報力がすごい。
これに載るとけっこう話題になるし、あちらもネタ探しが大変なようでこちらからネタ提供をするととても喜ぶらしい。

その中の一面に「おくやみ欄」というコーナーがある。
これは最近亡くなった方の情報がのっており、葬式の日時などが記載されている。
毎日だいたい5人ぐらいは載っているだろうか。
うちの母親もこれは毎日チェックしていて、
どこどこのばあちゃんが亡くなったとかここで知ることも多い。
これも地方ならではのものではないだろうか。

おくやみ欄の構成のされ方は、
まず名前の横に「○○が好き」「元○○会長」「元○○勤務」などその人の人柄や肩書を表すひと言が来る。
そのあとに名前、享年、死因、住所、趣味や勤務先について、そして葬式の日時などが記載される。
おそらく文字数にしたら原稿用紙半分くらいではないだろうか。
そうするとまあ200文字くらい。

なんだか面白い。
要するにそれがその人の人生なわけだ。
知人であればその人がその人だと理解でき、
知らない人でもその人がどんな人だったのかだいたいわかるということ。

内容も人によって本当にそれぞれ違う。
「元市議会議員」「元○○社長」など肩書で記載される人もいれば、
「花が好き」「家族想い」など趣味や人柄であらわされるパターンがある。
特に前者は男性に多く、後者のパターンは女性に多い。
やはり昔の一般的な家族像として父親が働き、母親は主婦という形が多いからだろう。

なんとなく今自分が死んだら何と記載されるのだろうと考えてみたくなる。

山雅が好き。
山崎量平(享年24)
3日の夜大型トラックと衝突し病院に搬送されたが4日朝死亡。
松本山雅のファンでありよくスタジアムに試合を見に行った。先月東京より生まれ育った松本市へUターンしこれから活動を広げようと志半ばだった。
葬儀は身内のみで執り行われる。喪主は父、剛さん。

リアル。
そして内容がつまらない。
もっと面白くならないものか。

目玉焼きは醤油派。
山崎量平(享年24)
3日の夜大型トラックと衝突し病院に搬送されたが4日朝死亡。
もっぱら目玉焼きには醤油派であり、コショウがあるとベストだった。
映画鑑賞が趣味で、好きな映画は「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!大人帝国の逆襲」。
葬儀は身内のみでとり行われる。喪主は父、剛さん。

ふざけすぎたが事実。
それにしても内容があまりにもなさすぎる。
これが自分の人生ということか。
まだ24歳とはいえこれでは寂しい。

例えば無趣味のニートの場合はどうなるのか。
やはり人柄になるのか。
さすがに地方紙でも「ニート」とは書かないだろう。
もし誰からも愛されず、誰のことも愛していない人だったらどうなるのか。
おそらく内容は生後生まれて間もない赤ん坊よりもない。
赤ん坊は愛されているだろう。
というかその場合は新聞にも載らないのでは。
市民タイムスもどこから情報を取ってきているのか分からないが、
そもそもその人がどんな人だったのか語る人がいなければこの記事はなり立たない。

その人がどんな人だったのか。
たった200文字ではあるが、そこには物語があり、その人が生きた証がある。
自分は何者なのだろう。
産まれた瞬間はみな0かもしれないが、
そこから自分というものを形成していってその人となる。
私は何者なのか。


考えてみると意外に面白い。